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円覚寺日記  横田南嶺大老師からお便り

微笑

 

覚寺日記

 

横田南嶺老師

「まわりを明るく」

明るい顔が まわりを明るくし
暗い顔が まわりを暗くする
いつもほほえみを失わない
そんな明るい顔をもち続けたい
自分の顔は 自分が見るためではなく
みんなに見ていただくためにある
そう気がついたとき
明るい顔づくりに 真剣に取り組むようになる
心の安らぎ 静かなよろこび
それが顔の表情筋を和らげて
美しい微笑みをつくりだす
明るい顔づくりは 一生の仕事である。

これは『ほほえみ読本』(健康生活舎)という狩野誠さんの作られた本にある言葉です。

『ほほえみ読本』という小さな本ですが、先代管長の足立大進老師が、この本を多く方にお薦めになっていました。

私もまたこの本をたくさん購入してご縁のある方に差し上げていたものでした。

もう十数年も前のことになります。

今も手元に置いている本であります。

この本を作られた狩野誠さまの奥様には何度もお目にかかっていました。

長野県にお住まいでいらっしゃいました。

平成十九年にお亡くなりになっています。

奥様もまた同じ年にお亡くなりになっているのです。

まだ私が管長に就任する前の頃のご縁であります。

そのご息女である狩野万葉さまに久しぶりにお目にかかることができました。

『ほほえみ読本』のことなど話をしながら、十数年前の話題で盛り上がりました。
有り難いご縁であります。

「朝が来ない夜はない」 という諺がありますが
朝が来ない夜を私はいくたびか修羅の中で体験してきました。
どたんばに立たされたとき・・・
どん底でふるえていたとき・・
目の前がまっくらになったとき・・・
自分で自分をはげますために折々の言葉を座右銘として
ノートの隅に書きとめておきました。
「ほほえみ読本」の中のひとつひとつのことばのひびきは
私の痛恨の譜なのです。
編著者 狩野 誠

『ほほえみ読本』の裏表紙にはこういう言葉が書かれています。

そのように実に珠玉の言葉が集められている本なのです。

『ほほえみ読本』はその1とその2がありますが、ただいまその2は増刷中なのだそうです。

書店で買えるものではありませんので、直接健康生活舎に注文するしかありません。

私もまた十数年で新たなご縁の方も増えましたので、多くの方にお配りしようと思って来月増刷されたら送っていただくように注文したのでした。

狩野さんと共に、鎌倉の山之内にお住まいの方で、『ほほえみ読本』を愛読されているという方もご一緒にお越しくださって、有り難いことでありました。

「明るい顔がまわりを明るくし、
暗い顔がまわりを暗くする、」

「明るい顔作りは一生の修行である」

という言葉に触れると思い出すことがあります。

恩師の松原泰道先生のことであります。

お亡くなりになる年に、お目にかかった時でありました。

おうかがいした時はちょうどお風呂から上がったときで、これはお疲れかと思ってお目にかかるのをご辞退しようとしたのですが、すぐに私が来たことを取り次いで下さり、お目にかかることが出来たのでした。

お元気とはいえ百一歳のご高齢ですので、あまりもう長時間の話はご遠慮申し上げて、「おかげで十年ばかり勤めてまいりました」と申し上げました。

ちょうど、円覚寺の僧堂の師家を務めるようになって十年になっていたのでした。

すると、百一歳の泰道先生は私の手を握って心から喜ぶように、

「明るい顔になりましたね、本当によかったですね。大変だったでしょう。」と褒めてくださいました。

その後にも泰道先生の奥様がお亡くなりになったときにもご挨拶申し上げているのですが、この言葉が私へいただいた最後のお言葉でありました。

そうして褒めていただくと、なお明るい顔ですごそうと思うようになったのでした。

「ほほえみの効用」でも思い出すことがあります。

これもまだ管長に就任する前のことであります。

当時東京で兼務住職を務めていたお寺のお檀家さんのお宅に初盆のお参りにゆきました時のことであります。

亡くなられたときには本当の大勢の方が弔問に見えていました。

大勢の親族やご縁の方々に心温まるお見送りをされた葬儀で、印象に残っています。

遺影がまた素晴らしい笑顔でほほえんでいらっしゃいました。

私も素晴らしい笑顔ですねと、葬儀のあと御親族の方に申し上げました。

本当に普段いつもにこにこして暮していたおじいちゃんでしたと言われました。

そのご長男からお聞きしたのですが、この方はお部屋のいつも見えるところに「ほほえみの効用」を書いた紙を貼っていたそうです。

私もなるほどあの素晴らしい笑顔の秘訣はここにあったのかと思って、その時にメモさせていただきました。

いつもこのほほえみを身につけるだけで周りがあたたかく穏やかに暮らしていけます。

その「ほほえみの効用」というのが

「ほほえみは第一に心が明るくなる、
食事がおいしくなる、
血圧が安定する、
イライラが無くなる、
姿勢が美しくなる、
顔が美しくなる、
どんな逆境にも不退転の勇気を与えてくれる、
ほほえみは磨くほど効果が大きい、
ほほえんでご覧なさい心が明るくなりますよ
気持ちが落ちこんだときほほえんでご覧なさい
あかるくなります」

というものでした。

ほほえみを努力して身につけておられたのだと感じたのでした。

『ほほえみ読本』にある「ほほえみの効用」は

ほほえみの効用

一、食事がおいしい。
二、呼吸がととのい、心臓がらくになる。
三、血圧が安定し、血液が浄化される。
四、焦りや、イライラがなくなる。
五、疲れが早くとれ、ぐっすり安眠できる。
六、肩の力が抜けるから、姿勢が正しくなる。
七、目がきれいになり、顔が美しくなる。
八、言葉がやさしくなり、声が澄んでくる。
九、 他人の言葉が素直に聞ける。
十、花や風の心がわかり、植物や動物とも語れる。
十一、仕事に張りができ、人生が楽しくなる。
十二、ほほえみは磨くほど効果が大きい。
十三、ほほえみはどんな逆境にも、不退転の勇気を与えてくれる。

と書かれています。

その方が、『ほほえみ読本』から「ほほえみの効用」を学ばれたのか、他のものなのか今は知るよしもありません。

『ほほえみ読本』には

「ほほえみを磨く」として

「○ほほえみは鏡のように、いつも磨かないと、すぐくもってしまいます。
○ほほえみはお湯のように、いつも温めていないと、すぐ元の水になってしまいます。
○ほほえみは呼吸のように、絶えずつづけないと、すぐ詰まってしまいます。」

とも書かれています。

やはり不断の努力が大事なのです。

お互いに明るい顔で、明るいこころでいつもほほえみを忘れずに生きたいものであります。

 

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